味噌の雑学 ~調理と味の疑問・語源と歴史~

日本の基本調味料『さしすせそ』の“そ”である味噌についての雑学をお話します。

味噌の語源、由来と歴史

味噌の起源は、古代中国の大豆塩蔵品「醤(しょう・ひしお)」と言われています。

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塩蔵(えんぞう)とは、食べ物(特に腐敗してしまいやすい物)を、長期保存のためや、味を付けるために食塩に漬けておく古くからの方法で、塩蔵品(えんぞうひん)は、その方法で塩に漬けておいた食品をいいます。

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“醤”になる前の熟成途中のものがとてもおいしかったため、これが独立して味噌という食品に発展したことから、“未だ醤にならざるもの”「未醤(みしょう)」と名付けられ、味醤(みしょう)→味曽(みそう・みしょ)→味噌(みそ)と変化したと言われています。

平安時代に初めて「味噌」という文字が文献にあり、この頃の味噌の使い方は調味料ではなく、食べ物につけたり、なめたりしてそのまま食べていました。また、地位の高い人の給料や贈り物として使われるなど、庶民の口には入らない貴重品でした。

そして、鎌倉時代にすり鉢が使われるようになり、粒味噌をすりつぶしたら水に溶けやすかったため、みそ汁として利用されるようになるのです。

みそ汁の登場によって「一汁一菜(主食、汁もの、おかず、香の物)」という鎌倉武士の食事の基本が確立されます。

さて、このような歴史と語源を知ることで、より一層、味噌のすごさを感じると思います。

 

では次は、調理をするうえで、多くの人がちょっとだけ疑問に思っている味噌の疑問についてお答えします。

知らなくても生きてはいけますが、知っていると、原理原則がわかり、特に料理をよくする人は、応用も効くようになっていくでしょう。

このような知識の積み重ねで、全部を覚えていなくても“無意識になんとなくの感覚で”おいしい料理を作れるようになれます。

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さばを味噌煮にするのはなぜか?

当たり前にある料理すぎて、疑問に持つことさえしなかったかもしれませんが考えてみましょう。

味噌には、大豆のタンパク質が分解してできたうま味成分が多く含まれています。味噌は醤油と違い、分子が大きいコロイド状態のため、水やその他の物質を吸着しやすいです。

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*コロイドとは、分子が集まって、普通の顕微鏡で見えない程度の粒となって、浮きただようような状態で存在するもの

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さばのようにじんましんを起こすアレルギー物質のある魚を料理する場合、冷蔵庫や水が不自由で、衛生的な調理が難しかった昔は、

  • 魚の臭みを抑え
  • 有害物質を吸着し
  • 風味を高める

効果のある味噌が重宝されたのです。ちなみに、アジやサバをムニエルにする時に牛乳に浸すのも同じ理由です。

味噌煮は白味噌より赤味噌が使われるのはなぜ?

白みそは、大豆に対して、米麹の割合が多く、熟成期間も短いです。そのため、色は白く、味は甘くなります。このことからも、白みそは素材の持ち味を生かしたり、味噌そのものを味わう料理に用いられることが多いです。

味噌煮のように、

味付けと同時に、におい消しや有害物質の吸着などできる料理では、熟成期間の長い、コロイド性の物質を多く含む赤みそを使った方が、とくにクセのある魚に適しているのです。*においの少ない上品な魚は白みそが合います。

味噌汁の具の水分が多くてもあまり味噌汁の味が変わらないのはなぜ?

味噌汁は、味噌が汁に溶けているのではなく、かなり大きな粒子が分散浮遊しているだけです。

味噌汁をそのままにして時間が経つと、鍋底やお椀に沈むのはそのためで、溶けているのは主にアミノ酸、分子量の小さいペプチド、有機酸、糖類です。

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*ペプチドとはアミノ酸が2個以上つながった構造のものを『ペプチド』といいます。

*有機酸とは炭素を主成分とする「有機」が化合している物質の中で、酸の性質を持つものを「有機酸」という。

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こういう物質が汁の中に共存することで、緩衝能(かんしょうのう)という働きが生まれます。

緩衝能とは、例えば、水に酸を垂らすと酸性になり、アルカリをいれるとアルカリ性になりますが、味噌の場合、酸やアルカリを入れても性質が変わりにくく、はじめの状態を保つことを緩衝能と言います。

つまり、緩衝能のある液体は、濃度が多少変わってもその性質が変わりにくいため、豆腐のように水分の多い具材でも、芋のように水分のでない食材でも、味噌の味は変わらずに味わうことができるのです。

味噌汁を作る時、味噌を入れた後に入れた方がいい具材とは?

ほとんどの味噌汁の具は、味噌汁を入れる前によく煮込んだりしますが、豆腐わかめに関しては、味噌を入れる前に入れてはいけません。

理由は、豆腐は崩れやすいですし、“す”が入ってしまうため食感が悪くなります。わかめは煮込むとドロドロになってしまい味噌が濁ってくるため最後に加えて、温めるのがコツです。